空き家問題の原因

 

近年、住宅業界ではリフォーム・リノベーションという言葉をよく聞くようになりました。
これらは共に「既存の住宅に手を加えてより良いもの、より価値のあるものにする」という行為です。

 

一昔前までは新築信仰が根強い人気を誇っていましたが、住宅を取り巻く業界の変化というのは激しいものなのです。
実は、リフォーム・リノベーションに注目が集まり始めた背景には、「空き家問題」という問題があります。

 

この空き家問題は、今後ますます深刻になっていくと考えられているのですが、そもそも空き家問題とはいったいどのような問題なのでしょうか。
今回は空き家問題について詳しく解説していきます。

 

空き家問題とは

空き家問題とは「住み手や使い手のいない空き家が徐々に増えてきている」という問題のことを指します。

 

 

実際に空き家がどれぐらい増えてきているのかということは、総務省統計局が5年ごとに公表している統計調査から分かります。
現在最新のデータは平成25年のものですが、全国の空き家の数はおよそ820万戸で、空き家率は13.5%つまり7〜8軒に1軒は空き家だということになります。

 

統計調査を行い始めた昭和38年当時は空き家の数はおよそ52万戸で、空き家率は2.5%だったのでこの50年ほどでかなりの数の空き家が増えたことになります。

 

空き家が増え始めた主な原因

 

では以前と比べて、ここまで空き家が増えてきたのはいったいどのような理由なのでしょうか。主な原因を見ていきましょう。

 

需要と供給のバランス

まず1つ目は需要と供給のバランスが取れていないということです。

 

新しく世帯を持ったり、新しい生活を始める人がいなくならない以上、新しい住宅への需要というのは恒常的に存在します。しかし何事においても需要と供給のバランスというのは非常に重要です。

 

住宅の需要と住宅の供給のバランスが取れていれば、空き家問題はここまで深刻にはならなかったでしょう。
現在は日本の人口も減少に転じているように、高度経済成長期やバブル期ほどたくさんの住宅需要が存在しているわけではありません。

 

しかし建築業界や住宅業界は、新しく建物を建ててそれを売ることによって利益を得ることが多いわけですから、少し需要が減ったとしても新築物件の建築スピードを落とすわけにはいきません。

 

そして不動産業界としても、安い中古の住宅を売るよりは高い新築を売った方が手数料等で儲けが多くなるわけですから、新築の物件を好みます。

 

このような業界事情が背景にあるせいで、新築物件の需要と供給のバランスは、現在明らかに供給過多に陥っているのです。

 

使われなくなったものが無くならない

そして住宅というものは使わなくなったからといって、簡単に捨てたり壊したりすることができるものではありません。
今までずっと住んできた家、亡き両親の想いが詰まっている家を取り壊すことなんてできるわけがない、という気持ちもあるでしょう。

 

もしくは金銭的な問題で、取り壊さずに置いておくほうが税金が安くなるから、という現実的な理由で取り壊さずにおいてあるという場合もあるでしょう。

 

実は上物が立っている家と、そうでない家では、後者のほうが税金が高くなることが多いのです。
さらに家を取り壊そうと思うと業者に頼むことになりますので、その分の費用もかかることになります。

 

わざわざ費用を払って家を解体した上に、以前よりも高い税金を払いたい人なんていませんよね。

 

さらに、建てられたのがかなり昔の家の場合には、もう1つ別の問題が生じている可能性があります。
住宅の建築などに関連する建築基準法は、何度かその内容に変更が加えられており、現行の建築基準法が施行される以前に建てられた家の場合には、その土地の基準が変わってしまい、再建築が認められないケースというのがあるのです。

 

「今の決まり以前に建てられたものだからしょうがないけど、一旦取り壊しちゃったら新しい家は建てられないよ」ということです。
そういった条件の土地に建てられている家の場合には、取り壊さずに置いておくしか仕方がないですよね。

 

中古住宅の人気がない(新築信仰)

そして最後は、中古の住宅よりも新築の人気のほうが根強いということです。

 

生活用品等の場合には、使われなくなったものはリサイクルすることも多いですが、住宅の場合はリサイクルをしようにもそもそも住宅購入検討者が新築を希望する場合が多いのです。


この背景には先ほどお伝えしたように、建築・住宅・不動産業界の思惑があります。
この思惑がいわゆる住宅購入検討者の「新築信仰」を産むことに繋がっているのです。

 

もちろん新築の方が性能や耐用年数等において優れていることは間違いありません。
しかしこれまでの住宅関連業界は住宅購入検討者に対して、過度に新築の素晴らしさをアピールし続けてきました。
そういった行為が今の空き家問題を生んだ理由の1つでもあります。

 

世帯の所得が少しずつ下がってきた結果、新築物件には手を出せないということで皮肉にも中古住宅の人気が高まってきているという流れがあるようですが、中古住宅に今以上の注目が集まらない限りは、空き家問題は今後より一層深刻な問題になるでしょう。

 

空き家問題が及ぼす影響とは

犯罪の温床になる可能性

空き家は普段は人が近寄らないような場所なので、不法侵入や不法占拠といった犯罪が簡単に行われてしまいます。

 

また、総じて空き家が多い地域というのは治安が悪くなりやすい傾向にあり、元々その地域に居住していた住民と、空き家を不法に利用している人の間で小競り合いが起こったり、空き家が放火されたりというような事件が日本各地で頻発しています。

 

そして空き家というのは、築年数がかなり経過している木造住宅であることが多いですから、放火等が起こってしまえば延焼は免れません。

 

自分の住んでいる家は問題ないと思っていても、近くに空き家があるということは常にそういった危険と隣り合わせであるということなのです。

 

衛生面等への悪影響

また、手入れされていない家には野良犬や野良猫が住みついたり、虫が発生することもよくあります。
野良犬や野良猫の糞尿などを放置したままにしておけば、非常に不衛生になりますし、そういった糞尿が元になって新たな虫が発生するという悪循環が生まれてしまいます。

 

また、住宅地の中にある空き家というのは、異質な存在感を放ちます。
その異質さが元で「何となく嫌な感じがする」「何となく活気がない」というような印象を与えることになってしまえば、その近隣や町全体の評判・価値が下がることになります。

 

その結果家を売却しようと思っても、思ったような値段で売却できないといったような不利益を被ることになりかねません。空き家が近くにあるだけで、このように様々な問題が起きる可能性が潜んでいるのです。

 

以上が、今日本で徐々に問題になりつつある空き家問題です。
この問題は今後一層深刻になっていくことが、ほぼ確定しています。

 

総務省の予想では2040年ごろの空き家率は25%近くまで上昇しているということなので、4軒に1軒は空き家だという時代がそう遠くない未来にやってくることになるのです。

 

自分1人があがいたところで、どうにかなる問題ではないかもしれませんが、空き家問題について興味・関心を持つ人がもっと増えていくことで、この問題が今以上に取り上げられて何かしらの対策が打たれるようになるかもしれません。
まずは国民1人1人が空き家問題について、より知っていくことが重要です。

空き家問題の対策

 

空き家がものすごいペースで増えてきている昨今、政府も現状をただ手をこまねいて眺めているだけではありません。
2015年に2月に、「空き家対策特別措置法」が制定されています。

 

制定された2月から全ての条文が施行されたわけではありませんでしたが、同年5月に完全施行となりました。
通常、一部条文の施行が留保されている場合、完全施行に至るまでにはある程度の年月を要する場合が多いのですが、最初の発令から3か月というスピードで完全施行に至ったところに、空き家問題に対する政府の本気度を感じることができます。

 

では、この空き家対策特別措置法とはいったいどのような内容なのでしょうか。
今回は空き家対策特別措置法について分かりやすく解説していきます。

 

空き家対策特別措置法

空き家対策特別措置法の重要な意義は「市町村など各自治体の空き家対策に、法的な根拠を与える」ということです。

 

空き家問題というのは首都東京のみの問題ではなく、全国規模の問題です。
政府や東京からトップダウンで対策を行うのは到底無理なので、各自治体による取り組みが必要不可欠なのです。
しかし、今までは空き家対策にどのように対処すべきか、といったようないわゆるガイドラインのようなものが全くない状態でした。

 

そこに空き家対策特別措置法が制定されたことで、基本方針が示されたわけです。
法的な根拠があるかないかでは自治体の取り組みやすさも全く異なってきます。

 

各自治体の調査権限

空き家対策特別措置法では、各自治体が「空き家の所在と所有者の把握を行うために必要な調査を行ったり、情報の提供を求めることができる」と規定されています。
つまり各自治体が空き家の現状を調査するための権限を得たことになります。

 

裏返せばきちんと調査をしないと把握できないほど日本の空き家は増えてきているということです。
この調査において特に対策が必要な空き家は「特定空き家等」と認定されます。

 

特定空き家等の措置

特定空き家とは「そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態、適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態、その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にあると認められる空家等をいう」という定義に当てはまる空き家のことです。

 

この特定空き家に対しては解体の通告や強制対処、固定資産税の特例対象からの除外といった措置が取られます。

 

解体の通告や強制対処に関しては、いきなり解体が強制執行されるわけではなく、段階を踏んで行われます。

 

  1. 助言や指導
  2. 改善勧告
  3. 強制対処

まずは現状を改善できるような助言や指導が行われます。
この助言や指導を経ても改善が見られなければ、改善勧告が出されます。
後述しますが、この改善勧告が出された時点で固定資産税の特例対象から除外されることになります。

 

そして改善勧告を受けても改善が見られなければ、命令、強制対処という手順を踏むことになります。
強制対処にかかる費用はもちろん空き家の所有者が負担しなければなりません。

 

固定資産税の特例対象からの除外

そして、固定資産税の特例対象からの除外に関してですが、通常住宅等の上物が建っている土地は更地と比べて、固定資産税が優遇されています。
上物が建っているということは、街の発展や景観に役立っているとう考え方があるからです。

 

しかし、特定空き家に認定されてしまえば、「街の役に立っている」という大前提から外れてしまうことになります。
そのため、固定資産税の特例対象から除外されてしまい、最大で4.2倍もの固定資産税を払わねばならなくなります。

 

解体の強制執行に優遇措置からの除外と、空き家に対してはかなり厳しい措置が取られています。
しかしこれほど厳しく取り締まっていかねばならないほど、今の日本の空き家事情は切迫したものになっているということを今一度認識する必要があると言えるでしょう。

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