危険な空き家の判断基準・固定資産税・空き家対策特別措置法

みなさんは「空き家問題」という言葉やテーマをテレビで聞いたことがありませんか?
テレビの他、不動産系を話題にする雑誌等でも良く見かける言葉です。

 

空き家問題というのは、年老いた夫婦が死亡し相続等が発生するなどして後継者に所有権が移ったり、その他の原因で現在居住している家屋の使用者がいなくなった後の管理ができずに放置される空き家が増加しているというものです。

 

しかしただ単に空き家が増えて資産の有効活用がされないのが問題ということではなく、その空き家から生じる様々な危険が周辺の住民の健康や生命をも脅かす存在となってしまっているのです。
空き家問題は非常に深刻な問題であることを知っておく必要があります。

 

国もこの問題を放っておくことができなくなったため、法律までも制定して国レベルで取り組もうとしています。

 

この法律の名前は「空家等対策の推進に関する特別措置法」といって、少し長いので、ここでは「空家法」という名称を使用することにします。

 

それではこの法律が制定された背景と、空き家から生じる危険とはいったいどんなものなのかご説明しましょう。

 

空き家対策特別措置法が制定された経緯

現在わが国は少子化の一途をたどり国民全体に占める高年齢者の割合が急増している現状にあります。

 

特に地方では一国一城の主として一軒家を構えて生活している夫婦が大勢いますが、その方々の家庭では子どもが生まれ、そしてその子らはやがて成人し、自らも伴侶を得て新しい家庭を築き、新たな世帯として生活を送り始めます。

 

中には夫婦どちらかの両親と共に住むケースもありますが、そこには介護問題が絡んだり、親の方が遠慮するなどして同居はあまり好まれない傾向にあります。
また仕事の関係で同一都道府県内だけでなく、県をまたいで都市部など他県に移転することも多いでしょう。

 

そして親の世帯から離れた子供世帯は別の地で新たな世帯として定着し、そこで生活を営むことになります。
一旦築き上げられた生活基盤を変えることは容易ではなく、例え両親が他界し、故郷の実家が空き家になってしまっても、仕事の関係などで実家に住み直すことは難しいケースがほとんどです。

 

使わなければ売ったり貸したりすれば良いと思うかもしれませんが、特に一軒家は売却や賃貸が難しく、買い手や借り手がなかなか現れないのです。

 

長年住まれた家屋は前の住人の生活感が染みついているので、大規模なリフォームでも施さなければ「生活の傷跡」がまざまざと見えるために魅力がないのです。

 

しかし人が住まなくなった家は急速に朽ちることは皆さんもご存じでしょう。そしてその家屋の資産価値は激減します。

こうなると売却も賃貸もなおさら不可能になります。

こうして放置された家屋は倒壊の恐れが出てきたり、空き巣や不審者のねぐらとして利用されたりと治安上の問題も発生します。
特に隣近所の方は大変で、今にも倒れてきそうな家が隣にあっても、所有権が無いのでどうにもできないのです。

 

危険が生じるまでになった家屋は所有者(前述の例では相続して承継した子供など)が解体してくれれば良いのですが、これが二つの点で上手くいかないのです。

 

それが税金の問題と解体費用の問題です。

 

税金の問題とは?

我が国の税制では不動産を所有する人には固定資産税といって、所有しているだけで課される税金があります。

 

土地や家屋など不動産についてかけられるものですが、同じ不動産の所有と言っても転売して儲けるのが目的の人もいれば、ただ穏やかな生活を送りたいと自宅を建てるために土地を所有する人もいます。

 

これらの人を一緒くたにして同じ税率をかけるのは可哀そうなので、現在の税制では家屋を構えるために所有する土地には税金を軽くする措置が取られています。

 

しかし家屋を取り壊してしまってはこの軽減措置が受けられなくなるので、特に使用しない場合でも取りあえずそのままにして残しておく方が有利なのです。
家屋が建っている土地の固定資産税は6分の1という安い税額で済むので非常に有利です。

 

誰でもわざわざ自分にかかる税金を高くしたい人はいませんよね?
そのため空き家状態で長年放置されることになるのです。

 

解体費用の問題とは?

仮に所有者が解体をしようと考えた場合は解体費用を捻出しなければなりません。
家の規模にもよりますが、少なくとも数十万、高いと数百万円もかかってしまいます。

 

一部自治体では解体費用の助成をするところもありますが全額負担してくれるわけではなく、一部は自腹で費用を捻出しなければなりません。
とうことは、自腹で数十万円〜のお金を支払ってなおかつ高額な税金を支払うということです。
そんな選択肢を誰もとらないだろうということは想像に難くありませんね。

 

放置されて危険が生じるようになった物件は「空家法」の是正対象に

上述のようにして放置され続けた家屋はやがて朽ち始め、周囲に危険を生じさせる存在になります。

 

そのままでは周辺住民に危険が及ぶため、空家法ではこういった危険を生じさせる物件を「特定空家」と位置づけることにしました。
特定空家と認定された場合には行政によって一定の是正措置が発動され、所有者は一定の改善措置を取ることが求められます。

 

それではこの危険な空き家「特定空家」の判断基準はどういったものか見ていきましょう。

 

「特定空家」の判断基準とは?

国の定めでは特定空家とは、

危険

そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態。

景観を損う

適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にある家屋を指すとされています。

 

※二つある条件の内どちらか一つでも該当があれば特定空家の認定対象になります。

 

上記1は建材の腐食などが進み物理的に倒壊の危険があるような場合や、不快害虫やネズミの発生など公衆衛生上放置することが好ましくないような状態をいいます。
実際に建物の外観や内部を調査して、なお放置すれば実際に倒壊や公衆衛生上の問題が起きうるとされる場合は是正措置が発動します。

 

上記2はその地域にあって周辺環境と著しく調和しない、要するに景観的に酷く醜くなった状態や、空家の為不審者に不正に利用されるなどして周辺の治安に悪影響を及ぼすような物件をいいます。
景観的な面では都市計画法や景観法なども考慮して判断がなされることになります。

 

実際の判断は単純ではない

 

特定空家かどうかを実際に判断するのは地元市町村の役所です。

 

上述した特定空家の判断基準など、国が定めたガイドラインをよりどころにして判断を下すことになりますが、実際の判定は単純に上記の基準に該当すればすぐに特定空家とされるわけではなく、その物件が存する立地条件にも大きく左右されます。

 

どういうことかというと、この法律は空家から生じる「具体的な危険」を回避するためのものなので、例え倒壊の危険があってもその建物が存する場所が人っこ一人いないような場所であれば周辺への危険はないので特定空家とは判断されない可能性もあります。

 

逆に込み合った住宅地である場合は倒壊の危険性や衛生上の危険などが低度であっても特定空家と判断される可能性が高まるということです。

 

役所の職員は個別具体的に空家を調査して判断しなければならないので大変ですね。

 

危険な空き家と認定された場合のその後の処置は?

 

前回は空き家を放置したために「空家法」に定める「特定空家」に認定されてしまう場合の行政による判断基準のお話をしました。
今回はその認定を受けてしまった場合にどんな処置がされるのかをお話します。

 

特定空家に該当するかどうかの現場の判断は、国が定めた指針に従って地元市町村の役所が行いますが、いざ特定空家と認定されてしまうと今度はその状態を改めるべく是正措置が発動されます。

 

この是正措置によって不動産の所有者は特定空家から生じる危険を除去する必要が生じ、無視すればペナルティを受けることになります。

 

それでは特定空家認定を受けた後の是正措置の流れを見ていきましょう。

 

是正措置は4段階ある

行政による是正措置は一つではなく、効果の異なる4つの措置が段階的に取られることになります。

第一段階:指導助言

効果の弱い措置から段階的に講じられることになりますが、最初はまず指導助言から入ります。
指導助言というのはつまるところ、「あなたが所有している家屋は空家法に定める特定空家に該当しています。周囲への危険が生じるので所有者の責任で状況を改善して下さい。」というものです。

 

これを無視しても即座に直接何かペナルティが発生するわけではありませんが、その場合は結局後に続くペナルティ付の是正措置へと進むわけですから、不動産の所有者に改善策を講じる時間的余裕を与える意味合いで設定されたものと言えるでしょう。

第二段階:勧告

指導助言がなされても不動産の所有者が改善策を講じない場合は勧告の措置が取られます。

 

警告の意味合いを含むものですが、注意しなければならないのは、この勧告を受けた時点で固定資産税の優遇措置が無くなってしまうという点です。

 

勧告に従わなければ優遇が無くなるのではなく、勧告を受けただけで無くなってしまうということです。

 

つまり優遇税制を受け続けたいならば第一段階の指導助言の段階で従っておかなければならないということです。

 

ただし勧告を受けて一旦優遇税制が受けられなくなった場合でも、その後改善策を施し危険が生じる特定空家でなくなった場合には再び優遇税制を受けることができるようになります。

第三段階:命令

第二段階の勧告では不動産の所有者から優遇税制の利用権をはく奪するという経済的なペナルティを課すことで、特定空家の改善を間接的に強制しようとしています。

 

確かに優遇税制が利用できなくなるのは痛手ですし、だったら自治体の助成を受けて解体しようかと思わせる一定の効果はあるでしょう。
しかし人によっては単に面倒だったり、優遇税制の停止は特に痛くもないという人もいるかもしれません。

 

その場合は「特定空家から生じる危険の排除」という行政側の目的を達成できなくなります。
ですから最終的には力づくで空き家を解体する権限を行政に与えておかなければ法を制定した意味がありません。
そこで3番目の是正措置として改善命令が発せられます。

 

これは最終段階の是正措置を法的に正当化するための布石としての意味があります。
この命令にも所有者が従わない時に最後の手段として「行政代執行」という手段が取られます。

最終段階:行政代執行

行政代執行が発動すると、本来所有者しか手を出せない家屋を行政権力を持って解体することができるようになります。

 

本来は国民の財産権の侵害に当たるところですが、法の委任を受けた行政による命令に従わない場合には、「危険の排除」という目的を達成するためにこのような強制的な権力を行使できるのです。

 

さらに、その解体にかかった費用は後から所有者に請求されることになるので、結局は自腹で解体するのと同じことになってしまいます。

 

本来国民側の義務である行動を行政が代わって執行するので「代執行」といいます。
最終的にこのような強制措置を取ることができるということで、だったら指導助言など早い段階で指示に従った方が良いと所有者に思わせることができます。

 

行政代執行は日本国憲法で保障されている国民の財産の自由を侵す力を持つ強力な行為ですから、その憲法で認められた法律による国民への義務の賦課=今回の場合は改善の命令に従わない場合に発動できます。

また手続きも厳格で、所有者に対して気持ちを改めて改善措置を講じる時間的余裕を与えることにしています。

文書による戒告

まず最初は「文書による戒告」を行います。
これは文書の形で、改善が無い場合は代執行をかけるという予告を改めて所有者側に通知するものです。

 

市町村長の裁量になりますが、市町村長が定めた相当の期間に義務の履行=改善措置がなされない場合には再戒告を数度施すことも可能です。


行政代執行

戒告や再戒告に従う意思が見られない場合はいよいよ行政代執行が行われます。
その際は代執行を決定した旨の通知書「代執行令書」を所有者に通知します。

  • 代執行をなすべき時期
  • 代執行のために派遣する執行責任者の氏名
  • 代執行に要する費用の概算による見積額

が所有者に通知されます。

 

代執行がなされた後はその費用の清算ですが、解体費用は一旦行政が立て替えて支払っているので、所有者は自治体行政に対して費用を支払うことになります。

 

しかしこれは単なる支払いではなく、行政による国税滞納処分の例による強制徴収も認められるものです。
ですから支払い逃れはできず、支払いが滞ると財産の差し押さえもされてしまいます。


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